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『カキ殻システム進化』リアスの風掲載

 汚水浄化に威力/南気仙沼水産加工協組の新施設/カキ殻システム進化/血水と油処理、残滓再利用も

 南気仙沼水産加工業事業協同組合(阿部泰児理事長)のカキ殻接触式汚水浄化施設が順調に運転を続け成果を挙げている。これまで産業廃棄物として経費を掛けて別途処分していた血水を同時に浄化できるほか、残滓(ざんさい)や油分を分離して回収しフィッシュミールとして再利用できるシステムを採用した。天然素材のカキ殻を使うという利点だけでなく、自然に優しい浄化法として内外の注目を集めている。
 浄化施設は3月、気仙沼市弁天町2丁目に建設。現在は1日最大230トンを処理しており、来春には組合加入の他の加工場の排水も受け入れ、1日最大600トンの処理を目指す。
 同市のシェルタッチ工業(小泉則一社長)が施設を開発し、カキ殻に付着している微生物によって汚水を浄化する独自技術により建設した。
 血水を含んだ工場排水からごみを取り除いた後、水槽内に波を発生させ、汚水を回転させるなどして油分を中心部に集めて固化し回収する。この方法は今回新たに開発し、特許を申請している。
 油分を除去した水をカキ殻を敷き詰めたばっ気槽に移し、殻に付着した微生物が2段階で水を浄化していく。早ければ24時間で、河川放流が許される環境基準を大幅に下回る生物化学的酸素要求量(BOD)濃度まで浄化できる。最終的に残る汚泥は2~3%で、一般的な活性汚泥方式と比べると20分の1と効率的。
 建設スペースで比較しても3分の1で済む。カキ殻の追加は必要だが交換しなくてよい。運転のための電気使用量を含め、維持管理費は12分の1以下に収まるという省エネシステムになっている。
 シェルタッチ工業は、南三陸町志津川、商工団地内の水産加工場浄化施設や、気仙沼市大島の漁業集落環境整備事業により生活雑排水を処理するミニ下水道なども建設。海外では韓国釜山市の河川浄化など、その技術はさまざまな施設に採用されている。
 同社は東日本大震災で被災したが、本社を移転するなどして再起。小泉社長は「環境に優しく、技術の改良で浄化能力を高め、資源回収システムも確立した。震災からの復興を目指す気仙沼を支えていきたい」と力を込めた。
 県気仙沼地方振興事務所の渡辺達美所長は、先日同施設を視察し「気仙沼発の素晴らしい技術であり、県としても情報発信に努めていきたい」と話している。

『システム進化」リアスの風掲載
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